水産物、特に魚油含量の多い煮干し等からエキスを製造する際、水産物に含まれる魚油が固液分離の際に目詰まりを引き起こすことで濾過が円滑に進まなくなり、結果として製造効率が著しく低下することが課題となっています。
また、一部の脂質分解酵素を作用させると固液分離はスムーズに進むようになる半面、多価不飽和の長鎖脂肪酸が遊離されるために、エキスが強い苦みを呈するようになり、商品価値を低下させてしまいます。
エキスの製造工程で使用されるプロテアーゼに、リパーゼを併用することで、苦みの抑制と円滑な濾過、という商品価値と製造効率の両立が期待できます!
エキス製造工程において、脂質分解酵素であるリパーゼ(製品名:Palatase/パラターゼ)を使用することで、水産原料由来の短鎖脂肪酸のみをマイルドに分解し、エキスの風味を大きく変化させずに濾過工程の改善を行います。
実験データ:
Palataseによる濾過速度と風味の向上効果の検証。
下記配合(表1)および製造方法(図1)にて煮干しエキスを固液分離し、分離速度、風味、歩留まりなどを評価した。
【表1】煮干しエキスの配合
【試験方法】
1. 微粉砕煮干しと水を混合し50℃で撹拌
2. 酵素を投入し、50℃で2時間撹拌
3. 加熱失活(85℃・10分撹拌)
4. 吸引濾過
5. Brix、ろ液量を測定
【図1】煮干しエキスの試験方法
【結果】
1.分離速度の改善
煮干しを微粉砕した液を固液分離する際、基質に含まれる油分が目詰まりして濾過のスピードが落ちてしまう。Palataseを添加することによって、脂質が分解され、濾過がスムーズに進むようになった。(表2)
【表2】分析結果
2.歩留まり向上
コントロール(Palatase無添加区)では濾過後の残渣が水分を含み、濾液を十分に回収できていなかった。(図2・3)結果として可溶性固形分の回収量が低下してしまう。しかし、Palataseを添加することにより残渣の水分は減少し、歩留まりが向上していた。また、濾液のブリックスは両者間で大きな差異は認められなかった。(表2)
【図2】吸引濾過後の写真(横)
【図3】吸引濾過後の写真(上)
3.味質の改善
プロテアーゼのみで処理すると雑味が強く、苦みがあるエキスが回収されるが、それにPalataseを加えるとすっきりとした苦みが少ないエキスになった。(表2)
4.色味の改善
プロテアーゼのみで処理したエキスと比較して、Palataseを併用したエキスは濁りの程度が少なくなった。(図4)
【図4】ろ液の外観
Palataseを使用することにより、濾過工程を円滑に進めることがます。そのために短時間でかつ高収率で固形分を回収することができます。さらに、酵素の添加による苦みの改善もできます。
効果
推奨添加量
おすすめの併用酵素
酵素と添加量
効果
煮干しエキス
飛魚エキス
魚醤
固液分離工程の改善
効果範囲:100~10000ppm
最適添加量:1000~3000ppm
Alcalase, Flavourzyme:500~2000ppm
たんぱく可溶化による旨味、コク味強化
他にもさまざまな使い方をご提案できます!詳しくはお問合せください。
・Palatase(リパーゼ)
※ノボザイムズ社酵素:詳しくはお問い合わせ下さい。
※本記事に記載の実験データは測定値の代表例であり、保証値ではありません。
※本記事は、食品業界の関係者並びに関連する業務に従事している方への情報提供を目的としたものであり、一般消費者の方に対する情報提供を目的としたものではありません。