セルラーゼを利用した小豆の軟化

  • 食品
研究・テーマ
製品種類 酵素
用 途 餡子
特 徴 軟化
製 品 セルクラスト

研究の背景

餡の歴史は古く、日本人に愛され続けている食べ物です。餡の品質は原料である小豆によって大きく変わるとされ、一般に、名産地である十勝産の小豆は品質が良く、製菓・製餡メーカーから定評があります。一方で、近年、十勝産の小豆は価格の高騰が続いており、製菓・製餡メーカーは安価で低品質な海外産の小豆を使わざるを得なくなっています。

 

使用量が増えつつある海外産の小豆ですが、国内産と同じように加工した際、皮の硬さが問題となることが多くあります。製餡においては、いかに小豆の皮を薄くしながら軟らかく炊き上げるかが重要なポイントの1つであり、小豆の皮残りは餡の品質を著しく低下させてしまいます。そこで、簡便に軟化させる方法として、使われるのが重曹です。

しかし、デメリットも存在し、
①pHの変化による豆の着色
②小豆の風味の減退
③栄養成分の流出
などが課題となります。

 

そこで、上記課題を解決し、小豆を軟化させる方法として、セルロースの分解を特異的に促進する「セルラーゼ」の利用を考案しました。以下にセルラーゼを用いるメリットを、データを交えて紹介します。
尚、試験には、セルラーゼ製剤であるセルクラスト(ノボザイムズ社酵素/酵素概要についてはこちら)を用いました。

解決方法・データ

セルラーゼを使用することで、重曹における課題(着色、風味の減退、栄養成分の流出)を解決しつつ、豆の軟化を促進することができる。

実験データ:試験① 煮豆の硬さ

【試験方法】

煮豆の作製は、図1に示す煮熟工程で実施した。100 gの天津小豆を300 mLの水に入れ、そこに重曹またはセルクラストを1%添加し攪拌後、30分間で90℃以上になるよう加熱した。その後、90℃以上で20分間加熱し、1度目の渋きりを行った。煮上げた豆に300 mLのお湯を加え、5分間で90℃になるように加熱した。90℃以上で30分間煮た後、火を止め、蒸らしを行ったのち2度目の渋きりを行い、煮豆を作製した。対照として軟化剤を加えない無添加区を作製した。

煮豆の硬さは、クリープメーターを用いて調べた。すなわち、くさび型のプランジャーにより煮豆を1個ずつ切断し、豆が破断した荷重(破断荷重)を測定した。

図1 煮熟工程

図2 煮豆の硬さ

【結果】
セルクラスト添加区は、無添加区に比べて、硬さが顕著に減少するとともに豆毎の硬さの誤差、つまり煮えムラが小さくなることが確認された。このように、セルクラストを添加すると細胞壁分解の促進により餡粒子の形成が効率的に起こり、軟化が促進されることが示唆された。

実験データ:試験② 煮豆の外観評価

【試験方法】

煮豆の性状を確認した(図3)。

図3 煮豆の性状

【結果】
重曹添加区の煮豆の色は黒っぽく、セルクラスト添加区の煮豆は無添加区と変わらない見た目を示した。餡においてはその見た目も重要であるとされており、煮豆の着色は粒餡やこし餡の色に影響を与えるため、色度の薄い、淡い色の餡の製造にはセルクラストは有効であることが示唆された。

実験データ:試験③ 小豆の風味の評価

【試験方法】

煮豆の風味を官能試験にて評価した。当社専門のパネラー7名を対象に、表1に示した基準のうち、無添加区を3とした時の、重曹添加区、セルクラスト添加区の煮豆の風味を評価した。

表1

図4 小豆の風味スコア

【結果】
重曹添加区は小豆の風味が感じにくくなる一方で、セルクラスト添加区は無添加区と同等の風味を維持していることが確認された。重曹は熱分解により炭酸ナトリウムを生成し、特有の苦味を呈するため、小豆の風味の邪魔をしてしまったと考えられる。本結果より、セルクラストを使用することで、餡粒子の形成を促進しつつ風味豊かに豆を炊き上げられることが示唆された。

実験データ:試験④ 渋きり液の栄養成分評価

【試験方法】

重曹を使用することで、豆のタンパク質、食物繊維が渋きり液に流出することが考えられる。試験①に記載の煮熟工程で回収した1回目、2回目の渋きり液の栄養成分を評価した。

【結果】
1度目の渋きり液におけるタンパク質量は重曹添加区で顕著に大きく、セルクラスト添加区は無添加区と同等であった(図5)。
また、2度目の渋きり液における分析の結果、セルクラスト添加区はタンパク質、食物繊維ともに無添加区と同程度の量であった(図6、7)。
一方で、重曹添加区は無添加区、セルクラスト添加区に比べ、タンパク質、食物繊維が顕著に流出していることが確認された。

図5

図6

図7

使用方法の具体例

セルラーゼの利用により、風味良く、栄養成分を残しながら、軟らかく小豆を炊くことができます。酵素を使用する際、反応条件が酵素の効き目に大きな影響を与えます。そこで、上述した方法の他に、下記の使用方法を推奨します。

① 生豆を酵素液に1晩常温で浸漬(図8-a)

② 渋きり後、煮豆を50℃の酵素液に30分ほど浸漬(図8-b)

図8-a セルラーゼを添加するタイミング①

図8-b セルラーゼを添加するタイミング②

こんな用途に使えます

豆を煮る際に使用するため、餡の他、甘納豆や総菜の煮豆等、幅広い製品に応用が可能です!

甘納豆

茹で小豆

きんつば

※酵素は加熱・失活により表示が不要となります

使用している製品

セルクラスト(ノボザイム社酵素)

※特許出願中

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