ケストースは、スクロースに1分子のフルクトースが結合した三糖のオリゴ糖で、タマネギやライ麦など、我々が日常的に摂取する野菜や果物にも少量ながら含まれている、安全性の高い糖質です。
ケストースは、砂糖によく似たまろやかな味質(甘味度:30)で、水への溶解性が高く、耐熱性にも優れることから食品加工時の利便性が高い食品素材です。
また、ケストースは難消化性を示し、経口摂取後は消化されることなく消化管下部へと輸送され腸内細菌により選択的に利用されるため、プレバイオティクスとなり得る条件を備えています。
牛乳アレルギーは、牛乳に含まれるタンパク質であるカゼインおよび乳清タンパク質に対する、即時型の食物アレルギーです。
乳児期において発症する食物アレルギーの中でも、牛乳アレルギーの症例数は鶏卵アレルギーに次いで2番目に多いことが報告されています。食物アレルギーの治療法としては、アレルギーの原因となる食物を完全に除去し、自然経過による耐性の獲得を待つ方法が一般的でした。
一方で、近年の研究によって、食物アレルギーに罹患した小児の糞便において酪酸産生菌 (腸内で酪酸を作る菌) が減少していることが明らかになっており、腸内細菌叢と食物アレルギーとの関係が注目されています。
オリゴ糖の一種である「ケストース」は酪酸産生菌を増やすことが報告されており、乳幼児および小児の牛乳アレルギーに与える影響について、並行群間比較試験を実施しました。
【試験方法】
重度の牛乳アレルギーと診断され、負荷試験による安全な量の乳タンパク質を日常的に摂取するよう指導されているも増量が困難な30名の小児をケストース群 (23名) または無処置群 (7名) に分け、ケストース群には6ヶ月間ケストースを摂取させた。
【図1】6ヶ月後における摂取可能な乳タンパク質の量 (A)、乳およびカゼイン特異的IgE (B、C)
【結果】
ケストース群試験では、6ヶ月後における摂取可能な乳タンパク質の量が試験開始時と比較して有意に増加し、血清中における乳およびカゼイン特異的IgEが有意に減少した。(図1)
一方で、無処置群では、これらのパラメーターに変化は見られなかった。
また、ケストースを摂取した方の糞便では、Bifidobacterium属やFusicatenibacter属、Eubacterium属などの腸内細菌が有意に増加しており、特にFusicatenibacter属の変化は乳およびカゼイン特異的IgEの減少と有意な相関関係を示した。
これらの結果から、ケストースによる腸内細菌叢を介したアプローチが、牛乳アレルギーにおける耐性獲得の一助となる可能性が示唆されました。
※本記事は、食品または化粧品業界の関係者並びに関連する業務に従事している方への情報提供を目的としたものであり、一般消費者の方に対する情報提供を目的としたものではありません。