ケストースは、スクロースに1分子のフルクトースが結合した三糖のオリゴ糖で、タマネギやライ麦など、我々が日常的に摂取する野菜や果物にも少量ながら含まれている、安全性の高い糖質です。ケストースは、砂糖によく似たまろやかな味質(甘味度:30)で、水への溶解性が高く、耐熱性にも優れることから食品加工時の利便性が高い食品素材です。また、ケストースは難消化性を示し、経口摂取後は消化されることなく消化管下部へと輸送され腸内細菌により選択的に利用されるため、プレバイオティクスとなり得る条件を備えています。
1)三浦 洋 著,「食品新素材有効利用技術シリーズNo.13」社団法人菓子総合技術センター(2003)
2) Oku T.et ai., Bioavailability and Laxative Threshould of 1-kestose in Human Adult. Dynamic Biochemistry, Process Biotechnology and Molecular Biology.3,90-95(2009)
ヒトの腸内には、約3万種・1000兆個の細菌が生息していると言われています。この膨大な数の細菌は、下記の3種類に分類されます。
①有用菌(善玉菌):菌がつくる代謝物が宿主にとりよい効果を発揮する
②日和見菌 :善玉菌、病原性菌の優勢なほうに加勢する
③病原性菌(悪玉菌) :菌の代謝物が「便秘」「下痢」「癌」など、宿主にとり悪い効果を与える
①の有用菌には、下記の様な種類の菌が存在します。これらの菌を増やし、腸内で有用菌が優勢な状態を維持することが、健康な生活にとって重要だと言われています。
【Lactobacillus属】
一般的に乳酸菌と呼ばれ、ヨーグルトにも配合されている腸内細菌。乳酸を分泌することで腸内を酸性に保ち、有害菌の増殖を抑制すると言われています。
【Bifidobacterium属】
一般的にビフィズス菌と呼ばれ、ヨーグルトにも配合されている腸内細菌。乳酸と酢酸を分泌することで腸内を酸性に保ち、有害菌の増殖を抑制すると言われています。
【Faecalibacterium prausnitzii属】
酪酸産生菌に分類される腸内細菌で、ヒトの腸内で最も占有率の高い酪酸産生菌として知られている。酪酸産生菌が分泌する酪酸には、腸内を酸性に保つだけでなく、免疫力を高める機能が報告されています。
【試験方法】
成人男女6名に1日あたり5グラムのケストースまたはマルトース (プラセボ) を8週間摂取させた。
摂取開始前と摂取開始から8週間後に糞便を採取し、糞便中に含まれる有用菌 (Lactobacillus属、Bifidobacterium属、Faecalibacterium prausnitzii)の菌数を測定した。
【結果】
ケストース試験群では、摂取開始時と比較して、摂取8週間後の糞便に含まれる有用菌の菌数が増加していた。
3) Tochio T, Kadota Y, Tanaka T, Koga Y, 1-Kestose, the Smallest Fructooligosaccharide Component, Which Efficiently Stimulates Faecalibacterium prausnitzii as Well as Bifidobacteria in Humans. Foods. 2018; 7(9). pii: E140. doi: 10.3390/foods7090140.
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