水溶性潤滑剤の潤滑性能改良 ~環境配慮型加工液を可食原料で~

研究・テーマ
製品種類 糖アルコール
用 途 潤滑剤
特 徴 潤滑性
製 品 マルビット、エスイー20、スイートG2

研究の背景

糖アルコールとは??
工業分野の方々は聞き馴染みがない物質かと思いますが、糖アルコールは糖質の一種であり、多価アルコールの一種である物質の総称です。詳細は糖アルコールの基礎知識のページも併せてご確認ください。

ソルビトール(単糖糖アルコール)を例に概要を説明します。まず、ソルビトールは化学構造面でグリセリンときわめて類似する物質です。炭素数が3か6かが大きな違いであり、低分子の汎用的な多価アルコールであるという点が共通します。糖アルコールは水溶性であり、液製品は透明です。(図2)

【図1】 ソルビトールとグリセリンの化学構造

【図2】 糖アルコール液製品の外観

工業分野におけるソルビトールは、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤の合成原料や、水溶性切削剤に挙げられる工業用加工液の基材※として利用されています。

当社では、ソルビトール以外の特定の糖アルコール製品群に、工業用加工液の基材利用の可能性を見出しました。

※特許第6909731号

解決方法・データ

潤滑性の良い 糖アルコール製品群を発見!

 

実験データ:潤滑性能の評価

※本研究は福井大学工学部/本田教授との共同研究に基づくデータです。

関連情報はこちら

 

【試験方法】
往復摩擦摩耗試験機(図3)を用いて、各評価検体潤滑下で、SUS304プレート(下面、摺動面)およびSUJ2ボール(上面)によって、点接触型の基礎的な摩擦試験を実施した(図4)。試験条件を表1に示す。

【表1】 測定条件

 

【図3】 往復摩擦摩耗試験機

 

※ボール圧子(上面)と摺動面(下面)の間に各検体を滴下。水平方向の往復運動を実施し、摩擦抵抗力(摩擦係数)を測定

 

【図4】 試験概要のイメージ
 

【検体概要】
構成する糖組成(分子量)の異なる糖アルコール製品にて複数評価を行った(表2)。

比較対象として、食品機械用潤滑油(市販潤滑油)を用いて評価した。

 

【表2】 評価検体一覧

※ソルビトール:単糖、マルチトール:二糖、マルトトリイトール:三糖の糖アルコールの物質名

  ※市販潤滑油は様々な添加剤を含有する油溶性の物質、当社製品群は添加剤を含有しない水溶性の物質

【結果】
図5に摩擦係数の結果と図6に試験後のSUS304プレート(摺動面)の顕微鏡観察画像を示す。
水およびソルビトールS検体では、摩擦係数が高く摺動面の摩耗が観察された。一方、二糖~三糖を特定の割合で含有するマルビットおよびエスイー20は摩擦係数が低く、摺動面の摩耗も観察されなかった。これは市販潤滑油と同等あるいはそれよりも低い摩擦係数となった。

以上より、点接触型の基礎的な摩擦試験を通じて、二糖~三糖を特定の割合で含有する糖アルコール製品群(マルビット、エスイー20)に、潤滑性の良い物性があることが確認された(特許出願中)。

【図5】摩擦試験結果

 

【図6】 試験後の摺動面の顕微鏡観察画像

 

SDGsに挙げられる通り、環境配慮をより意識する時代となってきた中で、甘味料として主に利用されることの多い糖アルコール製品に新たな知見が確認されました
これまで水溶性の工業用加工液の基材は、グリセリン代替としてソルビトールが利用されてきましたが、今回ご紹介した新たな知見をもとに、当社糖アルコール製品群を検討されてみてはいかがでしょうか?

こんな用途に使えます

 ・食品機械用潤滑剤 (万が一潤滑剤が漏洩しても、可食原料です)
 ・シール性の低い機械用潤滑剤 (漏洩しても、生分解性があります)
 ・水溶性の工業用加工液の基材として

使用している製品

マルビット、エスイー20、スイートG2

その他の糖アルコールでも、同様の効果がある製品もございます。詳しくはお問い合わせ下さい。

※特許出願中 

※本記事に記載の実験データは測定値の代表例であり、保証値ではありません。

※本記事は、関連業界の関係者への情報提供を目的としたものであり、一般消費者の方に対する情報提供を目的としたものではありません。

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