【鮨道 遊園本店】は向ヶ丘遊園駅から徒歩1分のビル2階にあり、今年6月に立ち上げられた「鮨道」ブランドの旗艦店です。店主の中村さんは麻布の名店【鮨心】の元大将で、「お寿司を通じて世の中を豊かにしたい」という強い思いを持っています。北海道や地方の中卸から直接仕入れた旬の魚介を使い、素材の味を引き出すことで、年間を通じて安定した本格江戸前寿司を提供。和の静けさとモダンな美しさが調和する落ち着いた空間で、特別な体験を届けています。
今回は、江戸前寿司の伝統を守りつつ、新しい技術や素材を積極的に取り入れる中村さんに、食品の開発に携わる皆様に向けて、糖アルコール※を使ったシャリの開発秘話やその魅力、そして今後の展望についてお話を伺いました。中村さんの熱い言葉から、糖アルコールの可能性と寿司業界の未来が見えてきます。
※糖アルコール…安心安全の食品原料。自然界に幅広く存在しており、果物や野菜などにも含まれ、食経験が豊富な素材。
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―寿司職人になったきっかけを教えてください。
「食を通じた仕事に就きたいという漠然とした思いがありました。銀座で食べた江戸前寿司は、地元で食べていた寿司とはまったく違い、その技術や素材の違いに感銘を受けました。これであれば食で世の中に貢献できるのでは、と弟子入りを決意しました。お寿司は人を幸せにできる力があります。僕にとってお寿司がなければ、ただの中村でしかないんです。」
―お店づくりで大切にしていることは?
「世の中を豊かにするためにお寿司を握ることです。地方の中卸さんから直接買い付けることで、良い素材を適正価格で提供しています。お客様が喜んでくれることが何よりも大事ですね。」
―シャリの品質向上に取り組まれた背景は?
「江戸前寿司の伝統を守りつつ、シャリの味や食感の劣化を防ぐことが課題でした。砂糖を多く入れると甘くなりすぎて本格的な江戸前寿司から外れてしまう。スーパーの寿司が甘いのは劣化防止のためですが、僕の寿司はそうはいきません。」
―糖アルコールを使う前の試行錯誤は?
「従来の方法では70点を超えられず、味や食感のバランスが難しかったです。砂糖の代わりにいろいろな添加物を試しましたが、どれも満足できる結果にはなりませんでした。」
―糖アルコールを使ってみて良かった点は?
「液体で使いやすく、粉末の砂糖と比べて混ぜやすい。溶けやすいので、溶かすのに時間がかからず、扱いやすいのが助かります。自然界に存在する糖であることから、味もナチュラルで、化学調味料のようなケミカルさがないのが素晴らしい。」
―糖アルコールはシャリの味にどう影響しますか?
「お寿司は魚と酢と砂糖と米のシンプルな組み合わせなので、繊細な味わいが求められます。糖アルコールは素材の味を生かしつつ、劣化を防ぎ、味の落ちないシャリを実現してくれます。」
―糖アルコール使用で苦労されたことは?
「逆に苦労はほとんどありません。糖アルコールは寿司との相性が良く、融合してくれます。使い始めてからは味の安定や品質向上に繋がりました。」
―お客様の反応はいかがですか?
「シャリの美味しさを褒めていただくことが増えました。味のバランスが良く、素材の良さが引き立つと感じてもらえています。」
―今後、糖アルコールをどのように活用していきたいですか?
「もっとカウンター寿司が日本の日常の一部になってほしい。糖アルコールを活用したシャリの品質向上で、地域を問わず気軽に本格的な寿司を楽しめるようにしたいです。糖アルコールはその実現に欠かせない素材です。」
―同業者や食品メーカーに向けてメッセージをお願いします。
「糖アルコールは自然でナチュラルな素材であり、寿司の味を守り高める力があります。ぜひ躊躇せずに使ってみてほしい。Bフードサイエンス社の研究員の方とも、真剣に相談しながら取り入れてほしいですね。寿司業界だけでなく、食品業界全体の可能性を広げる素材だと思います。」
中村さんの言葉からは、伝統を守りつつも革新を恐れず挑戦し続ける姿勢が伝わってきます。糖アルコールは、シャリの品質向上に大きく貢献し、味の繊細さを損なわずに劣化を防ぐ優れた素材です。食品メーカーの皆様にとっても、新たな製品開発や品質改善のヒントになることでしょう。中村さんの未来への熱い想いとともに、糖アルコールの可能性にぜひご注目ください。
中村 導昌/NAKAMURA MICHIMASA
1978年、埼玉県生まれ。高校卒業後、「築地寿司清」に入社して7年間勤務。その後、「意気な寿し処 阿部」に転職し、店長を務める。2008年3月に独立を果たし、白金に「鮨心」をオープン。2013年8月、現在の南麻布に店舗規模を拡大して移転する。そして2025年6月、川崎に新たに「鮨道」をオープンし現在に至る。