【ずーーっっと微生物】

コラム

少し前に流れていた「ずーっとカーボン」というフレーズのテレビCMをご存知でしょうか?

私はここに映っていたお姉さんに勝手に親近感を覚えていました。と、言うのも、

私も「ずーっと微生物」だからです。(歳喰っている分だけ、お姉さんよりずーっとです)

 

私は、当社研究開発センターで新素材開発グループに所属しております。

3年前に当社に転職してくるまで、微生物を育てて(=培養して)医薬品を作る研究開発をしていました。

 

ご存知のように、お酒は酵母を、納豆は納豆菌を、醤油はカビを培養して作られています。同様に、ある種の微生物を培養すると、私たちを病原菌から守ってくれる抗生物質などの医薬品を作れるのです。

 

 

物産フードサイエンス株式会社は、糖アルコール(名前の通り、一端がアルコールになった糖)のメーカーです。

正直、微生物と糖アルコールとの関わりなんて、以前は考えたこともありませんでした。一般的な糖、例えばブドウ糖は、加熱により褐色に変質が生じるなど化学的に反応性に富んでいますし、解糖という経路で分解されエネルギーを生む生物学的にも最も代謝されやすい物質です。

一方、糖アルコールは、反応性に富んだ部位がアルコールになっているので化学的に安定な糖であるわけですが、生物のエサになりにくく生物学的にも安定な糖であるとも言えます。特に、四糖の糖アルコールであるエリスリトールは、砂糖の75%程度の爽快な甘味を有するにも関わらず、私たちが摂取した場合のカロリー値は0kcal/gであると認められている糖質であり、肥満の低減や血糖値上昇の抑制などに適します。また、虫歯菌のエサにならないばかりか増殖を抑制するので、虫歯を抑制できることも知られています。

このエリスリトール、実は特定の微生物を培養して作るのです。そう、最初に出て来た食品や医薬品と同様です。

 

何故、微生物は、エネルギーとして利用しにくいエリスリトールを作る能力を持っているのでしょうか??

 

実は、同様の話は医薬品の世界でも存在していました。すなわち、「何故、微生物は、一見生きるために必要でない抗生物質を作る能力を持っているのでしょうか?」と言う疑問です。

この疑問の答えとして、微生物は過酷な自然界で生き残る生存戦略として抗生物質を生産しているものと考えられています。例えば、植物内に棲む微生物であれば、自分の棲んでいる植物が物理的に傷つけられた場合、その植物を(間接的には自分を)植物病原菌から守るために、抗生物質を生産するというわけです。結局、生物は自分の為に有利な戦略を取っているのです。すなわち、特定の微生物がエリスリトールを作る必然的な理由もあるはずです。

そう考えると、微生物は環境中にある栄養を自分の為だけに利用する為に、エリスリトールを作っているのではないかと思えてきます。エリスリトールを作ったり分解したりできる能力を獲得した微生物にとっては、環境中にある栄養を素早くエリスリトールに変えてしまえば、自分達のエネルギー源として独占できるわけですから。

 

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微生物と糖アルコールについて考えると、「ずーっと微生物」はしばらく続きそうです。

(尚、微生物がエリスリトールを作る理由は、微生物が高浸透圧の(塩分濃度が高いなどの)環境に置かれた場合の対応策であると、一般的には説明されています。)